back forward
〈新安里屋ゆんた〉

 さて、2曲目は、本土でもよく知られた〈新安里屋ゆんた〉です。《マタハーリヌ ツィンダラカヌシャマヨ》(『死んだら神様よ』じゃないですよ)と書くだけで、メロディーまで思い出せる人も多いのではないでしょうか。
 工工四の下巻に〈安里屋ゆんた〉〈新安里屋ゆんた〉の2曲があります。ふつう、本土で〈安里屋ゆんた〉といえば、〈新〉のほうを指しますので、ここでも〈新安里屋ゆんた〉を練習しましょう。
 〈新安里屋ゆんた〉は、ほとんどの方がメロディーをご存じでしょう。〈鷲ぬ鳥節〉よりも数段覚えやすいし、弾きながら歌うこともやさしいと思います。楽しみながら練習してください。

(1)三味線を弾く

(1) 新しい音
 歌持を見てみると、2つばかり、見慣れない文字があります。
 中工七 七四七八??四上中工四工合五工・・・

 見慣れない文字(口へんに五、下尺)は、工工四の《勘所》の図を見れば正体がわかります。でも、これを使わないで弾く方法もあります。すると、歌持はこうなります。

(変更前) 中工七 七四七八??四上中工四工合五工・・・
(変更後) 中工七 七四七八五工四上中工四工合五工・・・

 実は、変更前も後も音の高さは変わりなし。指使いがかわるだけなんです。それを解説します。

(変更前)
 最初の《七》のときに、左手を15センチ下げて、人差し指で《七》を押さえるようにします。その位置で《??》も弾いてしまうわけです。次の《上》で、また左手をもとの位置にもどす。やってみるとわかりますが、これなら左手の上下運動が楽(時間的に余裕がある)ということになるわけです。ただし、めったに使わない位置ですので、正確な音を出すのがむずかしいでしょう。 工工四通りに弾きたい方は、《??》の部分がそれぞれ《五》《工》の音と同じになるように確かめて、押さえる位置を覚えてください。

(変更後)
 《七》の次に《八》、その次に《五》がきますので、このとき左手を素早く動かさなければなりません。あわてると、《七》《八》の音が短く切れてしまうことも・・・でも、変更前に比べると左手の位置がわかりやすく、音をつかむことも簡単だと思います。

 さらに変更を加え、《八》を《七》に代えてもいいのですが、ま、新しい音を覚えるのも大切でしょうから、《八》をつかうことにしましょう。どうも《八》は弾きにくいという方は、《七》にしてしまってください。

 ここでは、変更後の方で練習することにします。〈鷲ぬ鳥節〉に出てこなかった音は、《七》《八》、歌に入ると《老》も出てきますので、合計3つです。では、場所を確かめましょう


工-|-----五-----------------七-------八-------------  女弦
  |
四-|-----上--------中-------------------------------  中弦
  |
合-|-----乙--------老-------------------------------  男弦


 《七》の場所がわかるように、ガムテープで印をつけておきましょう。歌口から15センチを目安にしてください。《八》は歌口から20センチほどです。ガムテープなしで、勘(かん)で弾きましょうか。
 《乙》は使いませんが、〈鷲ぬ鳥節〉で出てきたので、書いておきました。(ほんとは、前のをコピーしたからそのまま残ってるんですけど)《六》は出てこないですが、どこになるかは想像できますね。ついでに覚えてしまいましょう。

(2) 小指の使い方
 〈鷲ぬ鳥節〉では、左手の人差し指と中指しか使わなかったのですが、ここで小指の登場です。
 《七》《八》は小指で押さえます。
 「おや、薬指さんはどうしたの?」
 とお気づきの方、するどい。なんと、沖縄の三味線では、薬指はほとんど使いません。未確認情報ですが、本土の三味線は、小指より薬指の方を使うとか。こんなところにも、沖縄と本土の文化の違い・・・かどうかは分かりませんが。
 さて、小指で《七》を押さえる場合です。小指は力が入りにくいので、ついつい、左の手のひらを棹におしつけてしまいがちです。でも、これでは指の動きがわるくなってしまいます。以下のことに注意してください。
 三味線の構え方をおさらいしましょう。左手は、《小さく前にならえ》のように。親指をたて、人差し指の付け根あたりに棹が乗るようにします。この状態なら、手のひらと棹は触れていませんね。手首には角度がついていないはずです。腕から手のひらまで、ほぼまっすぐでしょう。
 ここで、手のひらをあなたの胸の方にむけます。すると、小指が《七》の場所に近づいたでしょう。《七》を押さえるときには、このように《手のひらを胸の方に向ける》ようにするとよいでしょう。このことに注意しておくと、《早弾き》に挑戦するときにも手の動きがよくなるはずです。
 手のひらを胸の方に向けるという動作だけでは、小指が《七》の場所まで届かない場合は、手を少し下へ(七の方へ)滑らせなければなりません。そのときにも、左手の親指の位置は変えないようにするとよいでしょう。《七》の距離がつかみやすいと思います。
《八》も小指です。遠いですね。手の大きさにもよりますが、《七》を押さえるときは、小指を伸ばして届く人もいるでしょう。でも、《八》のときには、左手を下に滑らせなければ届かないですね。手の形は《七》のときと同じです。


(2)歌う

 共通語の歌詞ですので、特に解説は必要ないと思います。この曲は、〈安里屋ゆんた〉のメロディーをそのまま使っていますので、〈安里屋ゆんた〉の歌詞でも歌ってみてはいかがでしょうか。(〈安里屋節(あさどやぶし)〉でもほぼ同じ内容の歌詞が使われていますが、メロディーはちがいます)
 工工四の歌詞を見ると、《サーユイユイ》《マタハーリヌ》は書かれている行がずれていますね。これは《囃子(はやし)》で、別の人に声を出してもらう部分です。八重山には、〈安里屋ゆんた〉をはじめ、多くの《ゆんた》と呼ばれる歌があります。《ゆんた》には《囃子》の部分があり、掛け合いで歌えるようになっています。
 1番は、私が歌ってあなたが囃子。2番は、あなたが歌って私が囃子。小学校なんかで子どもたちとこんなふうに歌うと楽しいでしょうね。
 この囃子の部分を歌うことを、《かえし》と呼ぶこともあります。覚えておいてください。


△おまけ−6
 〈安里屋ゆんた〉が有名なわりには、歌の意味とか、どこの歌だとか、知らない人がほとんどですね。
 「『あんりやゆんた』って、何ですか?」
 と聞かれたこともありました。ここで、《ゆんた》についてのゆんたく・・・
 工工四の下巻を見ると、〈山ばれーゆんた〉〈まやゆんた〉〈崎山ゆんた〉など、《ゆんた》のつく歌がたくさん乗っています。
 《ゆんた》とは、八重山で歌い継がれてきた《労働歌》です。《労働歌》ですから、本来三味線は使わずに、歌だけで楽しみます。
 八重山では、田植え、田草とり、稲刈りなどの農作業や家造りを、数家族共同で行いました。たとえば、「今日は、Aさんちの田にみんな集まって田植えをして、明日はBさんちの田に行く。明後日はCさんち」といった具合です。このような共同組織を《ユイ》、共同作業を《ユイマール》といいます。《ユイユイユイ ユイユイユイ ユイマール・・・》という歌がありましたが、ご存じですか?
 みんなが集まって田草とりをしている。だまってやっても楽しくない。じゃあ、せっかくみんな集まってるんだから歌っちゃおう!てなわけ(?)で、農作業をしながら歌うというのが、八重山では常識になっていたようです。このような歌を《ゆんた》といいました。
 《田植えと稲刈りのときには、ゆんたはやらなかった》という話を聞いたこともあります。やはり、一番盛んだったのは田草とりのときなのでしょう。他に田畑への行き帰りで歌ったり、材木の製材のときにも《ゆんた》が歌われていたようです。
 《ゆんた》の他に、《じらば》《あよう》があります。《じらば》は《ゆんた》と同じく労働歌ですが、《ゆんた》とは区別されます。基準は、歌の調子だと思われます(テンポの遅い、ゆったりと音を伸ばすような曲は、《じらば》と呼ばれることが多いようです)が、島・村によって、《ゆんた》と《じらば》の区別の仕方が異なります。
 《あよう》は、主に祭りなど神行事で歌われる歌です。それぞれの村が大切に歌い継いできたものです。
 今、私たちが練習している歌、つまり三味線の音にのせて歌う歌を《節歌(ふしうた)》といって、《ゆんた》等と区別します。八重山の節歌には、《ゆんた》等に三味線の伴奏をつけたものや、《ゆんた》等を改作したものも多いようです。
 八重山には、工工四になっていない《ゆんた》等がたくさんあります。節歌もたしかにすばらしい。でも、《ゆんた》《じらば》《あよう》にこそ、八重山の歌の味わいがある。そう思うのは、私だけではないでしょう。


back forward