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〈小浜節〉

 ふと、『沖縄芝居』を見たくなるときがあります。沖縄方言の芝居、いや、沖縄語の芝居という方が正確でしょうか。それほど、独自の文化を築いてきたのが沖縄です。
 那覇市の国際通りから『ダイナハ』へいく道路には、現在も『沖映通り』という名前が残っています。その名前のルーツである『沖映本館』の客席には、イヤホンの端子が2つあって、1つは『日本語』、1つは『英語』で沖縄語の芝居が聞けるようになっていたそうです。その『沖映本館』も、今はパチンコ店に変わってしまいました。 常設のいわゆる芝居小屋は姿を消しましたが、今も『県立郷土劇場』や各地の市民会館等で特別に沖縄芝居が上演されることがあります。
 沖縄芝居に歌と踊りは欠かせません。お芝居の前に歌や踊りがあるのが普通ですし、お芝居の中にも歌や踊りが織り込まれています。なかには「歌劇」と銘打たれたものもあります。
 いわゆる商業演劇である『沖縄芝居』は、劇団の間で熾烈な競争があったといいます。それだけに、新しい芝居、新しい踊りの創作が盛んでした。音楽も、宮古、八重山、奄美の歌が広く取り入れられたようです。
 ところが、沖縄本島では、宮古、八重山、奄美の言葉はほとんど理解できなかったので、歌の意味よりも歌から受ける印象を大切にしてしまい、歌本来の意味とはまったく違った使われ方をされてしまった不幸(?)な歌もありました。
 この〈小浜節〉も、沖縄芝居の中で使われる曲の一つですが、メロディーが哀調を帯びているということで、悲しい場面に使われてきたようです。
 というわけで、沖縄本島でも有名なこの〈小浜節〉。どうぞ挑戦してみてください。

(1)三味線を弾く
 初めて《二揚》の曲に挑戦します。まず、三味線の調子を《二揚》にしましょう。本調子の《C−F−C》なら、中弦の音を1つ上げて《C−G−C》にするわけです。
 この曲は、歌の高さが《九》まであります。このままの《二揚》にしたのでは、声が出ないという方は、本調子《C−F−C》の男弦と女弦をそれぞれ音1つ分下げてください。つまり、《A#−F−A#》にするわけです。(A#にするべきところを、Bにしてしまいやすいので、注意してください)
 準備ができたら、演奏はこれまでどおりです。調子が変わっても、工工四で表されている漢字と使う指は同じ、《中》なら《中弦の左手中指》です。

(2) 歌詞

・くもまてぃるすぃまや かふぬすぃまやりば
 うふだぎばくさでぃ しるぱまままいなし ヤウンナ

・うふだぎにぬぶてぃ うしくだしみりば
 いにあわぬなうり みるくゆがふ

・いにあわぬいるや はたつぃぐるみやらび
 つぃづぃじゅらさあてぃどぅ うはつぃあぎる

 発音は、〈鷲ぬ鳥節〉の解説を参考にしてください。
 この歌は、《琉歌形式》で書かれています。
 《5・7・5・7・7》は短歌、《5・7・5》は俳句、それぞれ決まった字数(音数)がありますね。琉歌は、《8・8・8・6》でつくられます。沖縄の民謡は、おおむねこの形式で作られています。
 八重山にも、琉歌形式の曲がありますが、少ないですね。《ゆんた》《じらば》《あよう》は、琉歌形式をとっていないのが普通です。
 1番の歌詞《しるぱままいなし》は6音になるべきですが、8音になっています。歌詞のあて方は、

1番  しるぱままいなし
2番  み るくゆ がふ

 となります。

 歌詞の意味も簡単に書いておきます。

・小浜島(村)は たいへん豊かなしまだ。
 うふだぎ(山の名前)を背に 白い浜を前にして。

・うふだぎに登って、下を見れば、
 稲粟の実りが豊かで、すばらしい世の中を約束されている。

・稲粟の実りの様子は、二十歳ごろの美女のようだ。
 粒よりの稲粟を 神様に捧げよう。


 この歌は、聞かせどころ(歌謡曲などでの《サビ》)がはっきりしています。うまく歌えば、《うまい》と言ってもらいやすい歌ですね。息継ぎがむずかしいので、自分の持ち歌にしたい方は息継ぎをする場所を研究してみてください。そうそう、きれいなメロディーで哀調をおびて聞こえますが、歌詞の意味を読んでいただければわかるように、悲しい歌ではありません。


△おまけ−8
 〈とぅばらーま〉〈与那国しょんかねー〉〈小浜節〉を、八重山民謡の《3大情歌》と言った人がいます。聞く人の心を引きつけるすばらしい曲です。この、《心を引きつける》ために、音の高さが重要になってきます。
 人は、感情が高ぶると声が高くなっていきます。言い争いなどはよい例です。たいてい相手の声よりも高い声で応酬しあっているものです。最後には、声がかすれていたりします。
 歌の聞かせどころを《サビ》ということがありますね。これも、たいていは音が高くなっていく部分でしょう。

 結論。高い声の方が、聞く人の心を引きつける。(ま、高ければいいというものではないのですけど)

 先に書いた《3大情歌》は、たいへん高い音を使う歌です。楽に歌うには、チンダミを低くすればいいわけですが、それでは《心に訴える力》が弱まるかもしれません。自分はどの程度の高さで歌うことができるのかを、知っておくことも必要でしょう。
 ところで、男女いっしょに歌っていても、女性は男性の1オクターブ上の声で歌っている(自然にそうなっています)のをご存じでしょうか。普段から高い声で歌っているのですから、同じ曲でも、高い音を出すときに、女性の方が男性よりも苦しくなりやすいわけです。女性の場合、チンダミを自分で変えられる方は、低くした方が喉に無理がかからなくてよいかもしれません。


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