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〈とぅばらーま〉

 黄昏時、波の音を聞こうと浜辺に立つと、どこからともなく歌声が聞こえてきます。
 「月(つくぃ)とぅ太陽(てぃだ)とぅや ゆぬ道(みつぃ)通りょうる」
 感情を押さえた、それでいて心に滲み通るような歌声。と、その声に応えるように、別の方角から、
 「ツィンダーサーヨー ツィンダーサー」
 2つの声が、語り合っているかのように聞こえます。
 「かぬしゃま心(くくる)ん 一道(ぴとぅみつぃ)ありたぼり」
 「マクトゥニ ツィンダーサー」
 「んぞーしーぬ かぬーしゃーまーよ」

 こんな場面に出会うことができたらいいな、と思っているのですが、私は経験ありません。しかたないから、自分で場面を作ってしまうっていうのはどうでしょう。
 この〈とぅばらーま〉は、初めて聴いた人にも、懐かしさを感じさせる不思議な歌です。八重山民謡ファンならば、いつかはこの歌を歌いたいと思うのではないでしょうか。
 CD『八重山の歌上巻其の1・2』には、収録されていませんが、次の〈八重山育ち〉でも紹介している、音工『沖縄民謡大全集(8)宮古八重山民謡集』には〈トゥバルマー〉の名前で収録されています。他のカセットやCDでも見つけることができると思います。レパートリーにどうぞ。

(1) 三味線を弾く
 工工四を見ると、「調子間の装飾音は各自御随意に」と書かれています。「随意」だから、なくてもいいのかというと、これが、なくてはならないのですよ。演奏する人によって違いますが、それでも〈とぅばらーま〉っぽく弾かないといけませんから困ったものです。
 というわけで、一応簡単でそれらしく聞こえる方法を書きます。

 四   五   四   工

 なんと、歌持はこれだけしか書かれていません。それぞれの音の間に《合》を入れましょう。演奏はそうとうゆっくりとしています。CD等で確認してください。

 四 合 五 合 四 合 工 合

 こういうことです。これで、それなりに聞こえますが、今入れた《合》の後に、もう1つ装飾音を入れるといいですね。

 四 合六五 合五四 合五工 合五

 今入れた装飾音は、特に小さく弾いてください。歌に入っても、同じように工工四に書かれた音の間に《合》を入れてみてください。


(2) 歌詞

 《かえし》の部分と歌の最後の部分は、いつも同じでいいわけですが、男性が女性のことを想って歌う場合は、最後が『んぞしぬ かぬしゃまよ』、その逆の場合は、『んぞしぬ とぅばらまよ』となるのが普通です。掛け合いで歌われるのが一般的ですので、一人で練習するのはちょっと寂しいかもしれませんね。

 石垣市では、毎年旧暦の8月13日に、「とぅばらーま大会」が開催されます。老若男女、自慢ののどを聞かせてくれるわけです。本土からの参加者もおられるようです。
 歌うだけではなく、創作された歌詞の発表の場にもなっています。
 10年ほど前の大会を見ましたが、大会が終わってからのこと。八重山民謡の歌い手・大工哲弘さんが
 「最近のとぅばらーま大会は、みんな同じ歌い方になってしまっている」
 と嘆いておられました。
 本来、とぅばらーまは歌い手の数だけ歌い方があるものだそうです。みなさんも上手、下手を気にせず、自分なりに歌って楽しみましょう。
 余談ですが、(余談ばかりですみません)〈野(ぬ)とぅばらーま〉〈道とぅばらーま〉などと、種類分けをすることもあるようです。


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