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8、早弾き−1
 これがやりたかったのよ!という方、多いでしょうね。早弾きです。

〈山崎節(山崎ぬあぶじゃーま)〉

 もともと黒島の曲ですが、沖縄全県的に知られています。歌もさることながら、《アンガマの面(八重山の旧盆行事で使われる面。おみやげにもなってます)》を使った滑稽な踊りが有名ですね。

(1)三味線を弾く

(1) 早弾きのリズムをつかもう
 沖縄の結婚披露宴のしめくくりは、《カチャーシー》という、とにかくみんなで好き勝手に(形はありますけどね)踊ってしまおう!という踊りが必ずあります。(八重山でも《カチャーシー》で通りますが、やはり《モーヤー》と言ってほしい気がします)
 本島では、〈唐船(とうしん)どーい〉をはじめ、〈嘉手久(かでぃーく)〉〈アッチャメー小(ぐゎ)〉等多くの《カチャーシー》向きの曲があります。私の知るところでは、八重山では〈六調(ろくちょう)節〉で踊ることが基本だと思いますが、テンポの速い曲ならば何でもOKです。それに、八重山でも先に書いた本島の曲を使うこともめずらしくないでしょう。
 さて、ここでは、〈山崎ぬあぶじゃーま〉を練習しましょう。工工四には、〈山崎節〉と書かれていますが、一般には〈山崎ぬあぶじゃーま〉あるいは〈あぶじゃーま〉の方が通りがよいと思います。

 音工『沖縄民謡大全集(8)宮古八重山民謡集』=カセットテープ
 マルフクレコード『沖縄民謡名選集(7)』=CD
 この2つには〈山崎ぬあぶじゃーま〉が収録されています。他にもあるかもしれません。1つ手に入れておくと練習できます。

 早弾きには、あのスキップするようなリズムが必要です。
 さて、どのように文字で表そうかと思案した結果、このように決定いたしました!

 パッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカ

 ふざけるな?ふざけていません。これでリズムがわかるはずです。わからなくてもわかりなさい。
 これに合わせて、〈山崎ぬあぶじゃーま〉の歌持を書きますと・・・

 パッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカ
 五 四工 尺上 尺工 合七 五工 尺上 尺工 老

 このようになります。
 工工四では、そのリズムを表していません。理由は、リズム通りに表記すると、文字がくっついて見づらくなるからでしょう。それに、最後まで同じ《スキップ》のリズムですので、《早弾きなのだ》とわかれば、リズムを漢字の位置で表記しておく必要はありませんね。工工四に《早弾き》あるいは《早調子》とかかれている場合は、このリズムなのだと思ってください。


(2) 工工四を見て弾いてみる
 では、練習しましょう。初めはゆっくりと確実に音を鳴らすことと、リズムをくずさないことを心がけてください。
 あとは、何度も練習してなめらかに弾けるようになるだけです。さあ、勝手にやってなさい。では冷たいので、注意点をいくつか書いておきます。
 @ 早弾きの場合、テンポがだんだん早くなりやすいものです。《パッカ》のリズムをしっかり意識しましょう。ややもすると、《パカパカパカ》となってしまいがちなのです。
 A 音がとぎれとぎれになりがちです。自分の演奏を聞いて、「どうもなめらかに聞こえないな」と思ったら、左手の指の動きを見てみましょう。次の音を出すまでは、前の音をしっかり伸ばす。例えば、〈山崎ぬあぶじゃーま〉の歌持《五 四工 尺上 尺工 合》ですと、最初の《五 四》と《尺上 尺》のところがキーポイントです。
   《五 四》のところは、《四》を弾くときまで、人差し指で《五》を押さえていなければなりません。これが早く離れてしまいがちです。《五》から《四》へと音が続いていなければいけないのに、指が早く離れてしまうと、音がとぎれてしまうのです。結果として、雑な演奏に聞こえてしまいます。
   《尺上 尺》も同様の注意が必要です。左手は《小指−人差し指−小指》と使うわけですが、それぞれの指が早く離れやすいのです。人差し指で《上》を押さえるまで、小指は離さない。そして、小指が《尺》を押さえるまで人差し指を離してはいけません。これを意識するのとしないのとで、音のなめらかさが違ってくるのです。 そして、これがうまくできるようになると、これまで練習してきた〈鷲ぬ鳥〉等の三味線も格段にうまくなっているはずです。


(3) 指の練習
 いろんな《早弾き》の曲を練習していれば、指の動きも自然によくなってくるものです。でも、早弾きは、文字どおり指を早く動かして弾くわけです。指を正確に早く動かす練習もしておいた方がいいですね。
 指の練習として、次のような音を鳴らしてみましょう。

  パッカパッカパッカパッカ
@ 工 老上 老工 老上 老(繰り返し)
A 工 老尺 老工 老尺 老(繰り返し)
B 上 老尺 老上 老尺 老(繰り返し)
C 合 上老 尺合 上老 尺(繰り返し)
D 老 上老 尺老 上老 尺(繰り返し)

 この練習は、@からDへ、だんだん難しくなっています。まず@を練習してください。自信がついたらAへとステップアップしましょう。CDはリズムが崩れやすいので要注意です。どれもできるようになったら、@@AABBAA@@という組み合わせ、@@AABBCCDDといった組み合わせなど、考えて作ってみるといいでしょう。このときは、切れ目無く弾くようにしましょう。

 ここでも、1つの音を十分に伸ばすことを意識します。たとえば、Bの練習をするとき、最初の《上》の音は、次の《老》の音をならすまでしっかりと伸ばす=左手人差し指を《老》を弾く寸前まで押さえ続けていることが大切です。「次の音を鳴らすまで、前の指を放さないようにする」ことを心がけて練習をすれば、きれいな早弾きに近づきます。


(2)歌う

(1) 歌詞
 歌詞は工工四の上巻にあります。
 《年寄れ》=《とぅすぃゆれ》、《隣》=《とぅなるぃ》、《程》=《ふどぅ》
 八重山の黒島の歌です。内容は、年寄りの浮気の話ということになります。黒島では、たいへん滑稽な味のある踊りが伝承されています。

(2) 早弾きでの歌い方
 早弾きでは、歌が堅くなりがちです。
 三味線を《パッカパッカ》のリズムで演奏していますので、声の上げ下げも三味線のリズム通りに《パッカパッカ》してしまいがちです。歌は、流れるように歌いましょう。
 私が練習しているときに、「三味線をひきながら、隣の人とおしゃべりができるようになれば上達した証拠」なんて言ってました。手は意識しないでも動くぐらいになれば、流れるように歌うことができるということでしょうね。


△おまけ−10
 実は、八重山民謡の場合は早弾きに『掛音』をあまり使いません。使ってはいけないわけではないのですが、使いすぎると《ヤボ》な印象をうけます(私は)。でも、使うなあ。使いたくないけど。
 どこで、どのように掛音を使うか。結局、演奏者のセンスによるというわけです。


△おまけ−11
 究極のテクニック?
 三味線を前に置いて、彼は膝の上で拳を固く握りしめていた。
 「どうすればいいんだ。あと1カ月で・・・とても無理だ」
 彼は、来月、どうしても、どうしても早弾きを演奏しなければいけなかったのです。もちろん、歌も。
 彼に課せられたのは、結婚式での〈山崎ぬあぶじゃーま〉の演奏でした。歌は覚えています。だれかが三味線を弾いてくれれば十分歌えました。三味線の方は、歌持だけはなんとか弾けます。ところが、歌になると三味線がついてこない・・・工工四を見ても、歌っているといつのまにかどこを弾いているかわからなくなってしまうのです。
 窮地に陥った彼は、ついに究極のテクニックを考案しました。それは、《歌持以外は、すべて《工 老工 老・・・》の繰り返しですませてしまうというものです。この乱暴なやりかたも、やってみれば実用的です。これから出てくる《早弾きのタイプ》の2つ目は、このテクニックの高度なものだといえます。
 その後、彼は上達しました。《工 老工 老・・・》だけではなく、ときどき《上 老尺 老》も入れるようになったのです。テクニックに磨きがかかったわけですね。


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