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9、早弾き−2

(1)早弾きのタイプ
 私は、早弾きに2つのタイプがあると思っています。
 1つは、今練習している〈山崎ぬあぶじゃーま〉のようなタイプです。歌のメロディーと三味線の音がほぼ同じように移動していきます。特に、前に説明した《パッカ》の《パ》に当たる三味線の音は、ほとんど声と同じ音になっています。三味線を弾けば、メロディーが自然に流れてくるので、工工四を見て練習するのもやりやすいですね。初めて早弾きを練習するときにはこのタイプがおすすめです。 八重山の早弾きの歌は、全部このタイプだと思います。
 2つ目は、沖縄民謡の〈アッチャメー小〉のようなタイプです。三味線の音と歌のメロディーがずいぶん違っているものです。三味線がメロディーを受け持つ部分もありますが、三味線の音だけでは、歌全体がわからないほどです。この場合は、工工四を見て練習することがたいへん難しくなります。
 早弾きを始めたばかりのみなさんは、1つ目のタイプの曲で練習するのがよいと思います。
 八重山民謡で、有名な早弾きの曲は、
 〈まやぐゎー節(与那国ぬ猫小(まやーぐゎ))〉〈真謝井(まじゃんがー)節〉〈桃里(とうざと)節〉〈川良山(かーらやま)節〉〈白保(しらほ)節〉〈まみとーま節(二揚)〉〈六調節(二揚)〉
 沖縄民謡で1つ目のタイプに入る曲は、
 〈唐船どーい〉〈嘉手久〉〈越来節(ぐいくぶし)〉などです。
 2つ目のタイプに挑戦したい方は、〈アッチャメー小〉〈多幸山〉〈ハンタ原(三下げ)〉がいいでしょう。
 このように分けて考えると、早弾きの練習にも《次の目標》を設定しやすくなるでしょう。
 同じ曲でも、演奏者によって印象が変わり、1に入れたくなったり2に入れたくなったりしますが、おおよそ以上のように考えていただいてよいと思います。
 八重山民謡の早弾きの曲の入ったCDやカセットテープは少ないようですので、沖縄民謡で練習してみるのもよいでしょう。沖縄民謡なら、早弾きの曲ばかりを集めたCDやカセットもすぐに見つかるからです。
 沖縄民謡の工工四は、先にも書きました『正調・琉球民謡工工四 第1〜・琉球音楽々譜研究所』が書店やレコード店で発見しやすいでしょう。全巻揃えるためには、財布が苦しいですけどね。ほかに、早弾きの曲を集めた『正調琉球民謡早弾工工四・琉球音楽々譜研究所』もあります。


(2)早弾きの掛音
 〈山崎ぬあぶじゃーま〉は、弾けるようになりましたか?
 《三味線の方はけっこうできるけど、歌はまだまだ》という方も、遠慮せずに次のステップへまいりましょう。
 早弾きをきれいにまとめるには、《掛き弾き(かちびち)》が必要になります。
 〈あがろうざ〉にあった『掛音』の奏法を早弾きでも使うわけです。早弾きの『掛音』は、はっきりと音を鳴らしてかまわないと思います。

 まず、次のように早弾きで弾いてください。

 パッカパッカパッカパッカ
 上 老上 老上 老上 老(繰り返し)

 これに、掛音を入れます。ゆっくりとやってみましょう。
 最初の《上》を弾いたら、次の《老》を弾く前に、同じ《上》の音を爪で下から引っかけて鳴らします。聞こえる音は、

 パッカ
 上上老

 こうなりますね。早弾きの掛音は、基本的に《パッカ》の《パ》の音と同じ音(この場合、《上》)を使いますので、同じ音が2度聞こえるわけです。このとき、全体のリズムをくずしてはいけません。続けてやってみてください。

 パッカパッカパッカパッカ
 上上老上上老上上老上上老

 掛音に慣れてきたら、今度は次のように弾いてみましょう。

 パッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカ
 上 老上 老上上老上 老上 老上 老上上老上 老


 早弾きの『掛音』は、普通、このように部分的に入れるものです。工工四(早弾きの工工四)には書かれていないので、どこに、どのように入れるかは、演奏者の個性ですね。
 《指の練習》を載せておきます。これに、掛音を入れて練習してみてください。特に、BとCはむずかしいですよ。Dは沖縄民謡〈多幸山〉の歌持です。

  パッカパッカパッカパッカ
@ 上 老尺 老上 老尺 老(繰り返し)
A 工 老上 老工 老上 老(繰り返し)
B 合 上老 尺合 上老 尺(繰り返し)
C 老 上老 尺老 上老 尺(繰り返し)
D 老 尺工 上老 上四 老五 老工 上老 上四 上(繰り返し)

(掛音の入れ方の例)

  パッカパッカパッカパッカ
@ 上 老尺尺老上 老尺 老
A 工 老上 老工工老上 老
B 合 上老老尺合 上老 尺
C 老老上老 尺老老上老 尺
D 老 尺工 上老老上四 老五 老工 上老老上四 上


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