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(3)三味線の質と価格について

(1) 値段の違いは質の違い?
 3〜20万円の三味線の値段の違いは、どこにあるのでしょうか。
 三味線は、棹(さお)と、蛇の皮の張ってある胴(沖縄ではチーガと呼びます)、糸、糸の張り加減を決める糸巻き(カラクイあるいはムディと呼びます)等で構成されます。この中で、三味線の質を決めるのが、棹であるとされています。棹がイスノキ(ユシギ)でできたものが比較的安価なもの。上等は黒檀(こくたん=クルキ)です。同じ木材でも、樹の芯の部分を使った物は上等とされます。 ですから、黒檀の心材(クロキの芯)で作られた物、それも県産が最上ということになっているようです。
 黒檀の心材はそれ自身が黒いので、見ればすぐに区別がつきます。ならば、黒い棹を探せば上等なんだ!ということになるのですが、世の中そんなに甘くない。普通、三味線の棹は漆(うるし=本物かどうかわかりません)でつやつやと黒く塗られていて、中の材質は見えません。 棹の一番下の部分(胴から先端が少し出ていて、そこに糸をかけるようになった部分)や、上部の糸を巻きつけるために四角い穴を開けた部分の内側は、漆が塗られていないので材質を見ることができそうです。ところが、この部分にまで艶のない黒色が塗ってある物がほとんどです。中には、糸巻きの四角い穴の部分が金色に塗られている物もありますが、この手には安い物が多いようです。(はずれていたら、ごめんなさい)
 希に、棹に漆を塗っていないものや透明な漆を塗ったものもあります。材質がまるみえなんです。《材質に自身あり》の証明なのでしょうか、この手に比較的よい物が多いように思えます。ただし、値段のほうもかなりよいようです。
 というわけで、お手頃な値段の三味線の場合、材質の色を直接見るのはたいへん難しいのです。
 「ああ、困った。私の買った三味線がクロキがどうかわからない・・・」
 このような心配は無用です。お手頃な値段の場合、黒檀が使われていることは、まずありません。それに、三味線店で、「これ、クルキですか?」と聞けば、材質を親切に教えてくれるでしょう。
 購入に際して、予算が決まっていれば、おのずと材質も決まってしまいます。たとえば、5万円の予算で、クロキの三味線を探しても無理な話ですし、15万円の予算を申し出れば、それなりの材質の三味線を用意してくれるはずです。

(2) よい音とは?
 自然の材質である木と蛇の皮でできた三味線は、同じ物が2つと存在しません。やはり、同じ値段でも音の差が生じます。三味線が複数あって迷った場合、最も確実な方法は、弾いてみてよい音のものを買う。あたりまえですね。でも、よい音というのが、初めて三味線を手にする人にはわからないものです。人によって好みの違いもありますが、私なりに言葉で表現すると、
《ハリがあって、重みがあり、響きがよく、雑音がない。》
ということになるでしょうか。
 たとえば、あなたが購入しようと思う三味線の音を鳴らしたときに、《テンーーー》という音に混じって《じー》といった雑音が入るのなら、やめておきましょう。棹とチーガの角度が悪い場合があります。(使っているうちに、このような症状が出た場合は、三味線店に調整をお願いしましょう。なおるはずです)また、《ボーン》といった感じのハリのない音。 これは、蛇の皮の張りが悪い(緩い)場合や、皮に裂け目ができている(できつつある)ためでしょう。
 三味線の皮は、強く張る方が音にハリがでます。しかし、強く張るほど皮が破れやすくなります。この《破れ》というのは、風船がパンと割れるような破れ方ではなく、少しずつ裂けていくような破れ方が普通です。新品の三味線でも、希に「あ、これ、そろそろ破れてきそうだな」という傷が見つかるものがあります。購入するときには、表面をよく見ておきましょう。
 乾いた、軽々しい音がするのは、棹あるいはチーガの材質がよくないためでしょう。これは相当の金額を出さなければ良い物は買えませんので、あまり贅沢は言えませんね。

 ところで、《かんからさんしん》をご存じの方もおられるでしょう。たしか、映画の題名にもなっていたと思います。その意味は《空き缶でつくった三味線》。
 戦後、沖縄の人々は、厳しい収容所生活を強いられていました。それでも歌と三味線を忘れることはできなかったのです。もちろん手元に三味線はありません。なければ、作ってしまえ、というわけで、棹は廃材、チーガは空き缶などを工夫して、三味線《かんからさんしん》を作ったのです。ハリのある澄んだ音は望めませんが、このようにして収容所生活の中でも、喜び悲しみを《かんからさんしん》にのせて歌っていたのです。 沖縄では有名な〈屋嘉節〉という歌は、このような生活の中から生まれたものです。
 市販のカセットテープの中には、この〈屋嘉節〉を、わざと《ボーン》といった悪い音の三味線をつかって録音してあるものもあります。その方が当時を生き抜いてきた人々にとってはリアルでよい音なのでしょう。よい音とは、さまざまですね。

(3) 人工の皮等について
 蛇の皮が手に入らなかったころ、米軍のパラシュートの布をチーガに張って三味線を弾いたという話もあります。《かんからさんしん》も空き缶で代用しているわけです。蛇の皮は県内で生産できません(輸入品です)ので、代用品はずいぶん前から考えられていたと言えますね。
 本格的に人工の皮が作られるようになったのは、私が三味線を始めた頃(1978年)だったと思います。《人工》を使えば、強く張っても破れないため、たいへんハリのある音が出せます。しかし、それも行き過ぎると、《金属的な音がする》と言われ、よい音の部類には含まれなくなってしまいます。見た目の美しさも本物には勝てないと思うのですがあなたはどう思われますか。
 破れる心配のほとんどない人工の皮。破れないというのは、張り替えの必要がないということですので、(もちろん、張り替えることはできます)メンテナンスの点でありがたいですね。貴重な動物であるニシキヘビの皮を使わずに、《人工》を使うというのは、いろんな面で有利です。改良も重ねられていると思いますので、ご自分の耳と目で確かめて、購入の候補にあげるのもよいでしょう。
 1996年5月現在、「人工の方が、蛇皮よりも安いですよ」という話を三味線店で聞きました。

 もう1つ、本物の蛇の皮に加工をほどこして、やぶれなくした物があるというコマーシャルをラジオで聞いたことがあります。どこのお店だったか、記憶していません。ごめんなさい。興味がある方は、探してください。

(4) 三味線の型
 本土の三味線には、用途に応じた種類があるようです。沖縄の三味線にも、いくつかの型があります。
 一般的なのは《真壁(まかび)型》と呼ばれるものです。このほかに、《南風原》《久場の骨(くばぬふに)》《知念大工(ちねんでーく)》などの種類があります。
 「本来、型によって音も違っていなければいけない。真壁は真壁の音、知念大工は知念大工の音がしなければいけないものだ」
 とは、ある三味線店での話。しかし、私には違いがはっきりとつかめません。また、古典のような《重厚な曲》には、太めの棹(知念大工等)、民謡には細い棹(久場の骨等)がよいと言う人もいましたが、そのように使い分けるというのは一般的ではありません。これから三味線を購入し、練習を始める方にとっては、型の違いは気にしなくてもいいことだと思います。
 え?じゃあ、書くな?・・・そうでしたね。


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